ワンルームファンタジー

みせたいものだけみてるよ

初めて◯◯のコンサートに行った日

たかが三年前、されど三年前の話だ。



11月の風がどれほど冷たかったのか、友達と綺麗に揃えた3色のスウェットが気温に適していたのか、よく覚えていない。

覚えているのは老若男女がごった返した会場の外のこと、震える手を3人握って見つけた席があまりにも近くて耳が痛くなるほどはしゃいだこと。


日本ってこんなに人いるの?って、きょろきょろ周りを見渡した。間違いなくあのとき、わたしは世界の中心にいた。



みんなみんな、しあわせそうに笑っていた。

こんなにも幸せしかない空間がこの世にあったのかと思った。
おじさんもおばさんもおばあちゃんも子供も、みんなが跳ねる心臓を押さえつけるみたいにして、その時を待っていた。

あと何分?やばい!あと5分!ペンライトちゃんと持ってる?いまごろ裏で何やってるのかなあ、あ、携帯電源切らなくちゃ……





彼らに出会って6年目の冬、わたしはようやくその夢の箱の中に入った。





出てきた瞬間、実感はまるで沸かなかった。だってなにあれ豆粒?誰が誰?
トロッコの外周のとき、鮮明に見えた顔は、みんなテレビと同じで、みんなテレビで見るよりずっとキラキラしていた。



誰にでも、まるで、小さい子をあやすみたいに手を振るその笑顔を、呆然と見ていた。本物は想像していたより顔が小さくて手足が長かった。遠くにいても双眼鏡なんてなくたってすぐ見つけられる、特徴のあるダンス。


映画館以上に大きな音響、モニターを見たのは初めてだったかもしれない。何かに捕まっていないと振り落とされそうな、でも振り落とされてしまった人間も受け止めておく籠をちゃんと用意してくれている、そんな空間。

今みたいにうちわも持ってなかったから、ただひたすら光るペンライトを落とさないように馬鹿みたいに両手で握っていた。





50000人の視線の先を独り占めして、屋根の向こうの空を見つめて、なんてそんなに悲しい目をするんだろうと思った。
白い羽の中、目の前のわたしたちにじゃなく、もう会えない誰かに歌った歌は、聞いていたわたしたちの胸を確かに叩いた。心にこんな入り方をする人だなんて知らなかった。

ドームの片隅で、緑の光を抱えて、そんな顔しないでって泣いていた。




テレビで見るのと同じ顔の人は、テレビで見るよりずっと輝いていて、ずっとずっと切なくて、ずっとずっとずっーと、綺麗だった。




わたしいままで6年、このひとをテレビで見るだけで、全部何もかも知った気でいたんだ。自分が急に恥ずかしくなった。






一番最後、わたしの好きな曲を歌ってくれた。
最後の曲のくせにみんな楽しそうで、悔しいけど、この曲のことがもっと好きになった。



おわったあと、ああもうこの幸せなままでこのまま死にたい!大阪に骨を埋める!って大騒ぎしてたけど、落ち着くとまた明日から頑張って生きようって思った。
こんなとこで死んじゃもったいない。来年も再来年も、もっとすごいものを見せてくれるに違いないんだ。ここで死んでどうする少女よ。





こんな広い会場で、歌って踊る豆粒の5人に、呆れるくらいに夢中になった。






あんなに儚い顔もできるんじゃない。次はどんな表情を見せてくれる?もっともっと見てみたい。

身長全部使って手を振ってくれるの。大阪3日目、もう体中筋肉痛で痛いだろうに、5人ともすごく楽しそうなの。ありがとう、ありがとうってわたしたちに笑ってくれるの。

楽しいのはこっちだよ。ありがとう、たくさんたくさんありがとう。
伝わっているかな。




高校生のころ、地元から一番近い京セラドームに行こうとしても、まあちょっとした旅行だった。バイトは校則で禁止されていて、月に5000円のお小遣いだけこつこつ貯めて、そのころ両親にはまだジャニーズなんてろくなもんじゃないって渋い顔されていて、残ったお年玉でファンクラブに入って。
地元には電車もない。友達だけで初めて切符を買って、道に迷ってそのたびに人に聞いて、道頓堀に行くだけで馬鹿みたいに時間かけて、とんだ大冒険だ。





ああそうだ、確かに幸せな冬だった。
ほかの誰でもない、嵐の5人が教えてくれた、16歳の幸せな冬だった。






初めてブログを書く側に回った。長い文章を書くのは慣れないし、このテーマも随分前の流行りだけれど、でもなんとなく書き留めておきたくて、いま携帯に向かっている。




あのころの気持ちだけ、忘れないようにしたい。

痛いくらいに眩しい、思わず泣き出してしまいそうな光の断片だけ、なくさないように取っておいて、また、あの季節になったら、ゆっくりと取り出そう。


壊れないように、どうか、大事にしていよう。







あれから3年。
たかが3年。されど3年。

わたしは大学生になり、実家を離れ新しい生活を始めた。自分で働いてお金を稼ぐことを覚えた。
同じ趣味を持つ友達が増えた。みんなわたしより大きな世界で生きている、わたしに共感と刺激を与えてくれる人ばかりだ。わたしは少しずつ、自分の世界を自分で広げている。

きっと、あのときよりずっと大人になった。








長い夏が終わるとすぐ、冬が始まる。

大切に、光を集めて、会いに行こう。











ーーーー相葉雅紀くん、わたしはいまでも、あなただけを応援しています。
もっともっともっと、煌めく世界に連れて行ってくれること、信頼しています。




これからも、あなたと、5人が見せてくれるものに、期待しています。













あのとき、緑のペンライトを持って泣いていたあの子も、忘れずに連れていくね。


相葉くんには、いつでも笑っていてほしいから。













相葉くん、見せたいとこだけ見せてね。

でも、見せたくないとこもきっと、ちゃんと好きだよ。














ーーーーーーー初めて嵐のコンサートに行った日
2013.11.24 京セラドーム 『LOVE』